「サブスク」というキーワードがトレンドワードとして、聞くことが多くなったのではないでしょうか。
今回は、オイシックス・ラ・大地では執行役員としてサブスクリプションモデルのEC戦略を担当している西井さん著の「サブスクリプション売上の壁を超える方法」についてまとめたいと思います。
目次
「サブスクリプションで売上の壁を超える方法」は、ストック型のビジネスを作りたい人におすすめ
「サブスクリプションで売上の壁を超える方法」はこんな方におすすめです。
- サブスクリプションサービスをはじめたい
- サブスクリプションサービス(定期購入サービス)をやっているがうまくいかない
- サブスクリプションサービスのビジネスをもっと成長させたい
このような思いを抱いている方にとって、この本は入門書でありながら、目の前の課題を解決するヒントを与えてくれるような、サブスクリプションの新しい実践書と言えるでしょう。
「サブスクリプション売上の壁を超える方法」著者の西井氏とは?
本書の著者である西井さんとはどのような方なのかを簡単にご紹介します。

西井敏恭(にしい・としやす)
1975年5月福井県生まれ。
WEBの面白さに惹かれて、2003年頃からEC企業にてマーケティングに取り組む傍ら、
旅行を続けて訪問した国は140か国以上。世界一周したデジタルマーケティングのプロとして、『ad:tech』をはじめ全国での講演、メディア掲載なども多数。
現在は、株式会社シンクロでは代表として、主に大手企業のデジタルマーケティングや、スタートアップ企業のサブスクリプションなどをサポート。
マーケティングの教育事業「Co-Learning(コラーニング)」なども展開。
また、オイシックス・ラ・大地では執行役員としてサブスクリプションモデルのEC戦略を担当。2019年より、ロボットベンチャーGROOVE X株式会社のCMOも兼務。
主な著書に『デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法』(翔泳社)があるので、まずはデジタルマーケティングの基礎知識を学ばれたい方は、こちらの本もおすすめです。

サブスクリプションで売上の壁を超える方法をまとめると
「サブスクリプションで売上の壁を超える方法」を簡単にまとめると次の通りです。
- サービス(商品)開発では顧客を成功に導くことを考えること
- データを活用してサービスを改善/顧客体験を改善する
- 顧客の離脱の原因を探り、それを防ぐ
- 継続的に利用してもらい顧客のLTVを最大化させる
サブスクリプションサービスを成功に導くためにはどんなことが大切なのか、まとめていきたいと思います。
サブスクリプションとは?
そもそも『サブスクリプション』とは何を指すのでしょうか?
簡単に説明します。
サブスクリプションの定義は「顧客が商品やサービスを使い続けたい気持ちをつくること
サブスクリプションとは、定期的な利用があり、かつデータが活用されている商品・サービスを指します。
サブスクリプションサービスとは、データを活用するためにデータを集めるのではなくて、長くサービスを利用してもらえるように、ユーザーの心理や行動を把握して商品やサービスをより良くしていくためにデータを集めて改善するサービスのことです。
なぜ、『サブスク』なのか?
なぜ、今『サブスク』なのでしょうか?
コトラーの提唱していたマーケティング論を踏めて考えていきたいと思います。
- マーケティング1.0:製品中心
- マーケティング2.0:顧客中心
- マーケティング3.0:価値重視
- マーケティング4.0:自己実現
企業の「売りたい気持ち」は完全に顧客に見透かされてしまっていて、商品を作れば売れる、PRをすれば売れるという時代はなくなったということです。
マーケティング的な観点で「売れ続ける仕組み」と「買いたい気持ち」を作らなければならなくなりました。
顧客に選んでもらう、利用してもらう、顧客の課題を解決するためは、蓄積されるデータをうまく活用し、『サブスクリプション・マーケティング』思考を持たなければいけません。
サブスクは月額定額モデルではない
- 定期通販
- 定期購読
- 定額利用サービス
今までもサブスクリプションサービスはありました。ただ、サブスク=月額定額モデルではありません。
サブスクリプションサービスとは、定期的な利用があり、かつデータが活用されている商品・サービスのみです。
都度利用はサブスクリプションではないことは、分かったかと思います。また、定期的な利用があってもデータが活用されていないものは、サブスクリプションではありません。
お客様の『困りごと』を解決するビジネスがサブスクに向いている
サブスクリプションサービスは、お客様の『困りごと(課題)』を解決してくれるような商品(サービス)がサブスクに向いています。
日常的に「そういうものだからしょうがない」と思い込んでいるものってありますよね。
どんな業種が向いているかというよりも、「そこにユーザーのペインがあるか?」
つまり『困りごと』があるのかどうかを考えます。
ペイン(pain) とは痛み。
つまり、商品やサービスを使っているときに感じる困りごとだったり、「こうだったらいいのに」という不満のことです。
顧客にどうなってもらいたいのか?
未来を想像しながら、それを実現するために、障害(課題/問題)になっていることを考えましょう。
サブスクリプション・マーケティングを実践するための3つのポイント
サブスクリプション・マーケティングを実践するための3つのポイントを紹介します。
- 買うから利用するへの変化を顧客の行動から理解すること
- データ活用による顧客体験の改善
- 顧客と企業による成功の共創
1つずつ説明していきます。
「買う」から「利用する」への変化を理解すること
まずは、顧客の購買心理の変化を読み取りましょう。
「買う」から「利用する」へ、顧客の購買心理は変わってきました。
昔
音楽を聴くために、CDを購入していた
現在
音楽を聴くために、サブスクリプション型の音楽再生サービスを利用している
以前と比較しても、顧客側の目的は変わりませんが、それを実現するための手段が変わりました。
データ活用による顧客体験の改善をすること
蓄積されるデータを活用して、顧客の不満や満足している部分を見つけて、顧客体験の改善をすることが重要です。
アドビは、デジタル編集ツールなどのソフトを提供/販売していました。しかし、今ではデジタル編集ツールの月額利用サービスへと生まれ変わりました。
顧客と企業による成功の共創|顧客の成功を一緒につくること
顧客が自身の目的を達成することを顧客の成功と言います。
顧客の成功は、商品やサービスを継続的に使うことで、得られる機能的な満足と、それによって気持ちが高まる情緒的な満足から作られます。
そうすることで、LTVが伸びていく。
顧客の成功は、企業が押しつけるものではありません。
改善されていく商品・サービスを利用し続けているうちに、顧客が「こんな体験がしたかったのだ」と得られたもの、それが顧客の成功です。
そして、この顧客の成功をコアバリューとよび、サブスクリプションではこのコアバリューをつくることが非常に重要 になっています。
サブスクリプション事業を作るための考え方は『PTCPP』です
儲かるサブスクリプションサービスを作るための考え方は『PTCPP』です。
- Pain(ペイン):ユーザーの課題を発見する
- Trial(トライアル):トライアルで仮説検証する
- Core Value(コアバリュー):独自性作り
- Profitability(プロフィッタビリティー):事業計画作り
- Product Market Fit(プロダクトマーケットフィット):顧客にサービスを適応させる
Pain(ペイン):ユーザーの課題を発見する
新しく事業開発をするときは、いきなり商品・サービスをつくるのではなく、仮説を立てて、それが正しいかどうかを検証していくことから始めます。
まずはユーザーを「セグメント(属性)」「ニーズ(欲求)」「ビヘイビア(行動)」 の3つの視点から分析し、それぞれのペインを発見していきます。
- セグメント(属性)
- ニーズ(欲求)
- ビヘイビア(行動)
ビヘイビアとは、特定の行動を取っている人を参考にしてペインを見つける方法です。
たとえば、「通勤に自家用車を使う人」「バスを使う人」「電車を使う人」といったような切り口。
ポイントは「この商品・サービスをすべて使っているわけじゃないけど、もうちょっと、こうできたらいいのに」というようなユーザーの隠れた心理を読み取ることです。
Trial(トライアル):仮説検証を実施する
トライアルには家族や友人など自身の身近な人に協力してもらうのも有効でしょう。
身近な人が「これいいね!」と思ってくれる商品・サービスをつくれないようでは、市場で受け入れられることなど到底難しい と思います。
Core Value(コアバリュー):独自性作り
従来の商品・サービスでは満たされていなかったニーズが何で、どのような形になればそれが満たされ、価値を感じてもらえるかを考えることです。
Profitability:事業計画作り
商品(サービス)が出来上がってきたら、事業計画をたてて「売上」「コスト」「利益」のバランスを考えていきます。
- 初回販売価格
- 2回目以降の販売価格
*コース別の販売価格 - 商品(サービス)原価
- 固定費
- 変動費
- F2転換率
- F3以降の転換率
- CPA/CPA
この要素を含めた、収支シミュレーションをしていきましょう。
サブスクリプションサービスの事業計画の立て方に関しては、別な記事でまとめたいと思います。
Product Market Fit:顧客にサービスを適応させる
ベータ版ではなく、一般顧客に向けた有償の商品・サービスとしてリリースしています。
「お客様がいきなり使わなくなった」「想定と違う使い方になっている」など、コアバリューを提供できていない顧客がたくさん出てきます。
それらをしっかりと分析して、 商品・サービスをマーケットにフィットさせる のです。この作業を プロダクトマーケットフィットといいます。
サブスクを成功に導くKPIは「会員数」「稼働率(継続率)」「単価」の3つです
サブスクリプションのKPIは「会員数」「稼働率」「単価」の3つです。
会員数は「新規顧客」「既存顧客」「解約客」で実施内容が変わる
会員数は、「新規顧客」「既存顧客」「解約客」に分けて考えていきます。
新規顧客の考え方は「転換率(サービス購入率)」。
ですので、「サイト訪問者数」と「CVR」の数値を追っていきましょう。
「サイト訪問者数」と「CVR」の数値をチェックする
稼働率(継続率)を上げるためにユーザー心理を理解しよう
既存顧客に関しては、サービス利用回数を見ていきます。
全体の売上は、「優良顧客」からもたらされるので、CRM(Customer Relationship Management)をします。
詳しくは、下記の記事を参考にしてください。
https://growth-ideas.com/marketing-crm
単価を上げるための『アップセル』『クロスセル』を実施を考える
サブスクリプションでは単価を上げることがゴールではなく、できる限り継続して使ってもらうことです。
単価を上げるための料金設定だけをするのではなく、継続利用してもらうために、より良い体験ができる価格設計を第一に考えます。単価設定で迷った際は、継続利用してもらいやすい方を選ぶことをおすすめしていました。
顧客属性によっては、他のサービスを販売したり、利用回数を増やしてもらうことで単価を上げることができます。(アップセル/クロスセル)
自社の会員属性を踏まえて、アップセル/クロスセルができるか、できるならどんなサービスを提供することができのか考えましょう。
サブスクリプションで売上の壁を超える5つのポイントとは
サブスクリプションサービスの作り方の流れをマスターしたかと思います。
サブスクリプションで売上の壁を超える5つのポイントは下記の通りです。
- LTVを伸ばす
- 事業を作るときは小さく始める
- 顧客の解約率を下げる打ち手が最重要
- LTV>CPOとなった時が広告投資のタイミング
- 顧客を中心とした組織を作る
LTVを伸ばすマーケティングをする
サブスクリプションサービスでは
顧客の「商品やサービスを使い続けたい気持ちづくり」が、サブスクリプションの本質です。
ですので、サブスクリプション・マーケティングでは、データを活用してLTVを伸ばしていきます。そのためには、顧客の成功が欠かせません。
商品・サービスを実際に利用して体験してもらい、フィードバックを受けて改善を繰り返すことで、顧客の成功をつくります。
顧客と一緒に商品・サービスを成長させていく共創が、サブスクリプションの面白いところです。
事業を作るときは小さく始める
サブスクリプションのモデルは「クラウド型」「シェアリング型」「予約購買・利用型」の3つに分けられます。
サブスクリプションの事業づくりのポイントは、小さく始め、顧客の声を聞き、改善しながら少しずつ事業を拡大していくところです。そのフレームワークがPTCPPです。
顧客の解約率を下げる打ち手が最重要
サブスクリプションでもっとも重要な打ち手は、顧客の解約率を下げ、商品・サービスへの定着を高めることです。
LTVがCPOを超えた時が広告投資のタイミング
過去の結果を表す従来の損益計算書(PL) では、サブスクリプションの収益を表すことができません。
未来の収益と成長も見据えた事業計画を立てることで、サブスクリプション事業の本当の姿が見えてきます。
立てた事業計画上の1人当たりのLTVと実績値を見ていきます。LTV-CPO>0となれば、広告投資のタイミングです。
上記の計算式が成り立つ限り、どんどん集客して構わなくなります。
サブスクリプションは初期投資が多い分、しばらくの間は収益がマイナスの状態が続きます。この期間をいかに早く脱し、収益をプラスに転じることができるかが、事業成長のカギとなります。
顧客を中心とした組織をつくる
サブスクリプションでは、営業やカスタマーサポート、商品開発やマーケティングなど、社内のあらゆる部署との連携が必要となります。
スピーディな改善を行うためには、顧客を中心とした円形のカスタマーセントリックな体制が理想的です。
まとめ
通常のビジネスモデルですと「過去のPL」を見て、事業の投資判断や戦略を立てて行くと思いますが、サブスクリプションサービスの場合は「未来のPL」を見ながら、投資判断/戦略を立てていきます。
そのため、スピード感を持った事業活動をすることができます。
不況の中でもいきなり収益がストップすることがないので、「準備」ができることも良い点ですね。